研究概要 |
胎盤 トロホブラストにおけるHLA-Gの発現について 我々はこれまでに、膜結合性HLA-G(Gm)にのみ反応する抗体olG、可溶性抗原(Gs)のみに反応する抗体16Gl、および両者(Gm+Gs)に反応する抗体87Gの3種のモノクロナル抗体の作製に成功し、これらの抗体の特異性をFACS,Immunoprecipitation,Western blotそしてELISAにより確認した。これらの抗体を用いて免疫組織染色、affinity column chromatography、immunoblotによりHLA-Gの発現を調べた。 胎盤組織の免疫染色を行なったところ、Gmは母体に侵入しつつあるextra-villous trophoblastにのみ発現し、Gsはすべてのtrophoblastおよび絨毛間腔の母体血中に分泌されていることを明らかとなった。 また、胎盤抽出液を16Gl affinity columnを通過させ、結合した蛋白のアミノ酸配列をしらべたところ、HLA-Gの配列と一致した。また同じく抽出液について,16Gl抗体を用いimmunoblotを行ったところ,精製Gs蛋白と同一の位置にバンドが検出され、胎盤におけるGsの発現を確認した。Gmがextra-villous trophoblastにのみ発現していることはこれまでにも報告があるが、Gsの発現部位については、ここで初めて免疫組織化学的にも、生化学的にも明らかにし得た。 HLA-Gの抗原提示能について HLA-Gの抗原提示能の有無について調べるため、その第一歩として,これがclass Iaと同様の特性を持っているかどうか、TAP依存性および結合ペプチドについて分析した。TAP依存性についてはTAP欠損株を用いて調べたところ、Gm、Gsのいずれもその発現が著しく低下し、TAP依存性であることが明らかとなった。また結合ペプチドについては、Gm、Gsのいずれの場合も、HLA-G transfected cell lineを用いた場合は、ほぼclass Iaと同様の各種細胞内蛋白由来の、9(まれに11)アミノ酸よりなるペプチドであった。しかし、胎盤より抽出したHLA-Dの場合は、cytokine receptorのsignal peptide様のペプチドが大半を占めていた。 胎盤 トロホブラストにおけるHLA-Eの発現について trophoblast上に発現するHLAはHLA-Gのみであるとされていたが、最近我々は、抗HLA-Eモノクロナル抗体の作製に成功し、その特異性はImmunoprecipitation,Western blotで確認し、これを用いて胎盤組織の免疫染色を行ったところ、弱くではあるが、HLA-Gの発現している部位すべてにHLA-Eも発現していることが明らかになった。
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