研究概要 |
子宮体癌細胞(石川細胞)株はM-CSFを分泌しており、M-CSF受容体(c-fms)も有していることを報告した。この細胞にc-fmsもしくはc-fms mutant genetransfectionしたものの増殖能を検討すると、1) c-fms geneをtransfectionし、M-CSF受容体を過剰発現させた細胞が最も発育速度が早かった。2) c-fms mutant gene(不活性型変異遺伝子:delta KI,KA612)導入株が最も遅かった。3) point mutationしたc-fms809導入株はc-fms geneをtransfectionし、M-CSF受容体を過剰発現させた細胞株と増殖能は同じであった。4) v-fms導入株の増殖能は、c-fms geneのtransfection株と不活性型変異遺伝子導入株との中間であった。5)転移能も増殖能と同じ傾向を示した。 このことから石川細胞株は、M-CSF autocrine loopを持ち、増殖能、転移能はM-CSF受容体遺伝子c-fmsのKIおよびKA612の構造が重要と思われた。 またこの細胞において、6) TNF,LPSやFOSKOLIN,CHOLERA TOXIN,8brom-cAMP,dibutyryl-cAMP,IBMXなどのc-AMP elevating agentsは石川細胞の増殖能を抑制し、一方、protein C系を介してTPAは増殖能を促進した。7) TNF receptor抗体、analogue投与実験より、TNFの増殖抑制機序は55kDa TNF receptorを介して作用しており、75kDa receptorを介していない。8) TNFやc-AMP elevating agentsはM-CSF産生を促進する。9) TNFやc-AMP elevating atentsはTUNEL反応やDNA histogramの成績より、apoptosisにより細胞増殖抑制をきたしている。 卵巣癌細胞株(PEO1,PEO4,PEO14)のM-CSF産生能は、1)子宮体癌株や子宮頚癌株に比し、有意に高く、IL-1やTNFに対する反応も異なっている。2)臨床サンプルにおいても卵巣癌患者の血中M-CSFレベルは、子宮体癌、頚癌患者のものに比し、有意に高い。また臨床期とも相関する。 このため卵巣癌は、他の婦人科癌に比べて異なった発育、転移形式をもち、免疫細胞、免疫療法に対する反応が異なる可能性が示唆された。
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