研究概要 |
われわれは、絨毛性疾患の発癌に関する研究において絨毛癌の潜在的癌細胞と考えられている全胞状奇胎の作製を試みてきた。現在まで、76回の胞状奇胎組織の培養を施行し、7回の長期継代に成功した。しかし、これの培養細胞は増殖が緩慢で3〜4年のlife spanをもち、最終的にはその増殖を停止してしまった。今回、無月経9週の全胞状奇胎組織から得られた培養細胞(BM-72)は以前の培養細胞とは、その形態、増殖能に差があり、SCIDマウスへの移植による腫瘍形成能も観察された。しかも、発癌プロモーター(TPA)、2週間処理細胞でのSCIDマウスへの移植ではプロモーターの濃度依存性に腫瘍増殖能に差が認められた。そこで、発癌プロモーター処理のどの時点で、どんな遺伝子の変化が起きるのであろうかをRNA arbitrary primed PCR(RAP-PCR)differential display法を使用して差異があればその異常部分のゲノムの検出、単離、同定をすることを目的とした。最近、新しく2種類の胞状奇胎培養細胞(BM-75,BM-76)を得て,SCIDマウスへの移植を試みるに、形態、増殖能はBM-72細胞に似ているが腫瘍形成能は認められなかった。培養細胞(BM-72,BM-75)に発癌プロモーター(TPA)を0.1,1.0,10,100pg/ml2週間添加処理したときに発現が誘導されると思われるcDNAをアガロース上に展開させて、TPA濃度間のバンドに差を認めるかをみると、ある3種の合成ヌクレオチドランダムプライマーの組み合わせの結果からBM-72細胞においては、2個のcDNA断片がTPA100pg/mlにおいて他のTPA濃度のバンドと異なり発現が抑制されているのが見られた。BM-75細胞についての発癌プロモーター処理後のRAP-PCRdifferentialdisplayの検索の結果でも、TPA1.0,10pg/mlにおいてcNDAの高発現並びに抑制がみられた。
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