研究概要 |
子宮体癌術中腹水細胞診陽性例は必ずしも腹膜播種に進行しないところから、腹膜播種形成の機序として、腹水中の癌細胞が腹膜に生着して播種巣を形成するという説に疑問を持ち,本研究に着手した。 1.術中腹水細胞診陽性例に腹腔内にチューブを留置し,術後洗浄腹水細胞診を行った。腹腔内に転移巣が残存しなかった症例は,皆術後2週間で陰性化した。手術時腹水中に認めた癌細胞は腹膜に生着せず2週間以内に腹腔内から消失したと考えられる。 2.癌細胞が卵管内を経由して腹腔内へ出現する機序として、インテグリンの原発巣における発現を検討した。筋層浸潤1/2以下でリンパ節転移のない内膜型腺癌G2の術中腹腔細胞診陽性例が4例あり、皆β3インテグリン強陽性であった。癌が卵管内を経由して腹腔内へ出現する機序としてインテグリンの関与が示唆された。 3.子宮体癌の卵巣転移に関与するインテグリンの解析を検討した。原発巣におけるβ1インテグリンの発現と付属器転移には有意の相関(p<0.001)がみられ、β1インテグリンが付属器転移形成に関与していることが示された。 4.腹膜播種へ進行する危険因子を探求するため,(1)子宮体癌完全摘出症例では術後腹膜播種に進行した例の臨床経過と(2)胃癌の卵巣転移を対象として検討した。播種形成は腹腔内に出現した癌細胞が腹膜に接着して転移巣を形成するよりもリンパ行性の可能性が高いと考えられた。 腹膜播種の形成機序を一端でも解明することで、腹膜播種への進行を予防する道が開け、癌の治療成績向上に貢献すると考えられる。
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