研究概要 |
1 微小血管吻合モデルとして従来我々はラット鼠径動脈を用いてきた。しかし今回の照射実験および長期開存をみるには、実験動物としてラットは不向きであるため、家兎耳介血管が吻合モデルとして適当か否かを検索した。ラット鼠径動脈の口径は1.5〜1.8mmであり、この血管をいったん切断後、手術用顕微鏡下に吻合を行って2日後に開存率を調べたところ100%(20/20)が得られた。また家兎耳介基部の動脈は口径が1.0〜1.5mmあり、同様の実験を行って97.5%(39/40)の開存率が得られた。以上の結果から口径1mm以上の動脈ではラット、家兎のいずれでも大差のない高開存率で血管吻合が可能であることが判明した。 2 同一術者による臨床例での遊離組織移植の際の血管吻合の開存率を調べた。遊離橈側前腕皮弁の動脈血管茎は口径1.5〜2.0mmである。この皮弁移植を230例に行っているが、皮弁壊死は2例で血管開存率は99.1%であった。また前腕皮弁より血管茎の細い空腸移植では動脈口径が1.0〜1.5mmで、家兎耳介動脈に匹敵し、この場合82例中3例が脱落した。開存率は96.3%であった。以上から家兎耳介の動脈吻合はほぼ臨床における遊離組織移植のモデルになりうると考えた。 3 頭頸部再建の際の術前照射を想定して、照射実験を行った。 家兎5兎10耳を1グループとして、各グループに20,30,40,50Gyを行い、3週間のちに血管吻合を行って2日後に開存を確認した。この結果20Gyでは開存率90%、30Gyで60%、40Gyで0%、60Gyで0%であった。吻合血管に対する術前照射は40Gyを越えると開存率が極めて悪くなることが判明した。臨床的には術前照射で40Gy以上の当たっている症例では組織移植のための血管吻合を照射野以外に求めることが肝要と思われた。 4 今後、保存した吻合血管標本を組織学的に検索して、照射による損傷部位および傷害機序についても解明したい。
|