研究分担者 |
松岡 弘 徳島大学, 医学部・付属病院, 助手 (50284328)
伊井 邦雄 徳島大学, 医学部, 助教授 (50035507)
大恵 眉美 徳島大学, 薬学部, 教務員
柴田 螢 (柴田 宝 / 柴田 瑩) 徳島大学, 薬学部, 助教授 (40035556)
山下 伸典 鳴門教育大学, 自然科学系, 教授 (50028180)
延藤 洋子 徳島大学, 医学部・附属病院, 助手 (90274224)
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研究概要 |
慢性中耳炎に真珠腫が伴うと病変部の骨破壊は著明となり,種々の重篤な合併症を引き起こすことは耳鼻咽喉科医の間でよく知られている。本症骨破壊機序に関しては,未だ不明な点が多い。本症の骨破壊や骨吸収を分子レベルからみると,その本態は,demineralization(脱灰)だけでなく,破壊骨表面にはremineralization(再結晶)もおきるという仮説を提唱した(耳鼻1983,Am J Otolarynggol 1998)。本仮説を実証するため実験モデルを作成し表面構造を解析することによって,本症の骨破壊機序を解明しようとした。実験系をより単純化するため,実験材料には骨の主要無機成分であるhydroxyapatite(HOAP)から成る市販の人工耳小骨のApaceram^<【encircledR】>(AP)を使用した。 in vivo実験ではAPの小円板をラットの肩甲骨間部の皮下組織に3,6,10カ月間埋込んだあと皮下組織とともに摘出し,AP表面とAPに接している皮下組織も観察した。in vitro実験ではAPからの無機成分の溶出挙動を定量化するため,生理的食塩水にAPの小円柱を浸した。結果は以下のとおりである。1.AP表面の観測:(1)未処理APにはHOAPだけでなく,ごく微量のHOAP以外のリン酸塩が存在した。(2)時間の経過とともに,in vitro実験ではAP表面からのイオンの溶出は増大し,また生体内ではAP表面のdemineralizationが進行(埋込後6カ月),さらにHOAP以外のリン酸塩の再沈着が起った(10カ月後)。2.APに接した皮下組織の観測:未熟な骨様物質(埋込後3カ月)や骨様物質(6,10カ月後)すなわちHOAPの沈着が観測された。以上APを用いたモデル実験の結果,生体内に埋込んだAP表面においてde-およびremineralizationがレーザー・ラマン分光光度計を用いて証明された。 結論としてAPが骨の主要無機成分のHOAPであることも考慮に入れて,真珠腫性中耳炎の骨破壊機序についての分子レベルでの解析結果は,われわれが提唱した仮説を支持している。
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