研究概要 |
癌細胞傷害性T細胞(CTL)の認識する癌関連抗原をコードする遺伝子が最近メラノーマを中心に同定されているが、その中で頭頸部扁平上皮癌細胞に高い頻度で発現されるMAGE-1,MAGE-3,GAGE遺伝子について、その発現をmRNAのレベルで検索した。MAGE-1,MAGE-3,GAGE遺伝子はそれぞれ27.8%,47.4%,42.3%の症例で発現がみられた。もっとも発現頻度の高ったMAGE-3遺伝子のコードする癌関連抗原のうちHLA-A2分子(日本人の約40%が保有)と共に癌細胞表面に発現されるペプチド断片であるFLWGPRALVを合成し、HLA-A2保有者の健康人の末梢血単核細胞を分離し、interleukin-4(IL-4)とGM-CSFを添加した培養液で培養することにより樹状細胞を増殖させた後、これに上記のペプチドをパルスさせて抗原提示細胞として用い、培養開始後7日目にさらにIL-1,IL-2,IL-4,IL-6を加えて培養を継続した。さらにペプチドの添加を7日おきに、IL-1,IL-2,IL-4,IL-6のサイトカイン・カクテルを3-5日おきに加えて培養して誘導したエッフクター細胞は培養開始後38日目の細胞傷害試験にてはHLA-A2陽性でしかもMAGE-3遺伝子を発現する頭頸部扁平上皮癌細胞を有意に傷害した。またこの細胞傷害活性はHLA-A2に対する特異的モノクローナル抗体によってブロックされた。このことは癌抗原ペプチドを用いて、その抗原に特異的なCTLを誘導できることを証明したことになり、HLA-A2とMAGE-3遺伝子を共に発現する頭頸部扁平上皮癌症例に対するこのペプチドを標的としたワクチンなどの癌特異的免疫療法を支持するものである。
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