研究概要 |
この研究課題では,ラットを用いた実験的中耳炎モデルにて,中耳局所の接着分子の発現を経時的に観察した.炎症の初期に中耳粘膜上皮,粘膜内,貯留液中にも接着分子の発現が認められ,貯留液中には,好中球上のLFA-1発現を促進する作用が認められた.特にICAM-1は,炎症早期に出現し,好中球の浸潤に関与していることが中耳においても確認された.さらにVCAM-1の発現も経時的な観察から,皮膚における炎症過程と同様の経時的変化が観察された.ここでは,中耳腔における炎症の過程には接着分子が大きく関与していることが確認された. 一方、中耳内における炎症の免疫学的過程を検討するため,グラム陽性および陰性桿菌の菌体成分を中耳内投与し,ケモカイン,サイトカインの中耳粘膜における産生およびmRNA発現を検討した.炎症早期に中耳粘膜よりケモカインの産生およびRNA発現が観察され,サイトカインの特性を中耳炎モデルにおいても確認された.この結果より,急性中耳炎に認められる好中球の浸潤にサイトカインが重要であることが,実験的に認められた. 後者の実験結果より,グラム陽性および陰性桿菌の菌体成分は中耳局所の起炎物質として働き,炎症性メディエーターの誘導を起こすことを確認し,人における中耳炎の炎症過程,特に発症早期の中耳腔の免疫学的変化を明らかにすることができた.
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