研究概要 |
虚血性網脈絡膜疾患として,主に網膜動脈分枝閉塞症についてまず臨床的に研究を行った.網膜動脈分枝閉塞症では虚血網膜部位に一致して視野感度低下がみられるが、それは多くの場合,絶対暗点または,それに近い非常に深い感度低下を示し,水平半盲の形をとることが多く,正常部位との境界は急峻な感度差を示す.これは虚血部位における浮腫による影響よりも,虚血による網膜内層の壊死が病態として主に関与しているためと考えられる.本症では心血管系の精査により,弁膜症,虚血性心疾患,不整脈,内頸動脈狭窄症などの発見される頻度が高く,これらの部位からの塞栓が原因として重要である.またこれに関連して眼底検査にて栓子が発見される機会が多いが,栓子は壊れて流されることも多く,観察される栓子が必ずしも動脈閉塞に関与してはいない.さらに黄斑部新生血管により生じる加齢黄斑変性症についてレーザー治療後,数週間以内に再発する頻度が高いこと,網膜細動脈瘤による視力障害として,網膜下出血を伴う場合が長期的にみると予後不良であることが,明らかとなった.実験的にはラット,家兎の眼を対象として,光化学的血管内血栓誘発による網膜および脈絡膜血管閉塞モデルを作成することが可能なことを確認した.すなわちローズベンガルを静注後手術用顕微鏡の照明光で60分間にわたり眼底を照明したところ,網膜血管,および脈絡膜毛細血管板での血管閉塞が観察され,SLOフルオ蛍光眼底造影検査にて確認された.このようにして作成した網脈絡膜虚血眼でphotopic ERGを記録し,振幅の低下,頂点潜時の延長がみられた.
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