研究概要 |
研究経過 これまでに確立したHLA-DNA解析法(PCR-RFLP法)を用いて、角膜移植のドナー、レシピエント81組のHLA-DR,DQ,DP抗原のHLAクラスII解析、およびそれらの臨床経過との関連の調査が終了した。81組のうち拒絶反応の危険性が高いハイリスク症例は51組で、うち18例(35.3%)で拒絶反応が発生していた。ハイリスクでない症例は30組で、うち6例(20.0%)で拒絶反応が発生していた。解析の結果、ハイリスク症例においては術後1年の時点で、HLA-DR,DQ,DP抗原の全てにマッチングのない症例は、少なくとも1つにマッチングのある症例に比べて、有意に拒絶反応の発生が少なかった(17%vs.50%,P=0.033)。HLA-DR,-DQ,-DP抗原の各々について検討すると、前2者ではマッチングと拒絶反応発症の間に有意な関連は認められなかったのに対し、DP抗原のマッチングの程度は、拒絶反応の発生と有意に関連していた。すなわち、ハイリスク症例において、HLA-DP抗原に少なくとも1つ以上のマッチングがある症例での拒絶反応発症率は7%であったのに対し、マッチングの無かった例では47%に発症が認められた(P=0.024)。また、免疫組織学的にHLA-DR,DQ,DP抗原が炎症のある角膜組織について発現していることが示された。HLAクラスI(HLA-A)抗原の解析は、症例数が少ないため拒絶反応に及ぼす影響については結論を得ることができなかった。 研究の評価 角膜移植におけるHLAクラスII抗原解析の意義について一層明らかにできた。これまで腎臓移植などでは、HLA-DR抗原の重要性が指摘されてきたが、HLA-DP抗原の重要性はどの臓器でもほとんど報告されていない。角膜移植の拒絶反応の発症頻度、時期が他臓器と異なることと考え併せると、今回の結果は、角膜移植の免疫学的独自性を示すものではないと思われた。
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