研究概要 |
本研究は,P.gingivalis線毛のサブユニット蛋白であるfimbrillinのアミノ酸配列を模した一連の部分ペプチドを用いて,同線毛を免疫したマウス脾単核球細胞中の抗原特異的ヘルパーT細胞サブセットであるTh1ならびにTh2細胞由来のサイトカイン産生を誘導する領域(T細胞抗原ペプチド)について検討した. まず,1.P.gingivalis菌体表層から線毛を機械的に剥離し精製した.また,Dickinsonら(1988)により明らかにされたP.gingivalis線毛サブユニット蛋白(fimbrillin)の構造遺伝子の塩基配列をもとに推定されたアミノ酸配列をカバーする一連の10merアミノ酸残基からなるペプチドをマルチピンペプチド合成法ならびに既存のペプチド合成装置を用いて合成後純化した.さらに,精製した合成ペプチドのアミノ酸配列を既存のアミノ酸シークエンサーで確認した.2.P.gingivalis線毛分子中のT細胞抗原ペプチドのマッピングは,線毛蛋白をBALB/cマウスに皮下投与して得た脾単核球細胞を部分ペプチドと共に培養し,その培養上清中のサイトカイン量をELISA法により測定した.その結果,fimbrillinの部分合成ペプチドp116-125(N末端側からのアミノ酸残基番号116-125に相当する)は,IL-2,IFN-γ,IL-4,IL-5およびIL-6の産生を明確に誘導した.p116-125に対応するアミノ酸配列には,SetteらのI-A^dおよびI-E^d binding motifならびにItohらのI-A^k binding motifを含んでいた.3.種々の系統の異なる線毛蛋白免疫マウスを用いて,T細胞抗原ペプチドのサイトカイン誘導能を調べた結果,p116-125は,BALB/cやDBA/2マウス(H-2^d),ついでC3H/HeNマウス(H-2^k)において強いIFN-γやIL-4産生がみられた.A/J(H-2^a)やC57BL/6(H-2^b)マウスでは同活性はほとんど認められなかった.以上の所見から,P.gingivalis線毛特異的Th1/Th2ヘルパーT細胞のサイトカイン誘導は,H-2ハプロタイプ(MHC)に拘束されることが示唆された.4.p116-125の細胞性免疫誘導能については,線毛蛋白免疫マウスにおいてみられなかった.
|