研究概要 |
歯科領域における炎症性疾患とカルシウム結合蛋白との関係を明らかにするため、口腔領域におけるカルシウム結合蛋白の分布や由来を調べ、さらに、唾液腺炎におけるカルシウム結合蛋白や神経ペプチドを含む神経線維の動態を免疫組織化学的に調べた。また、炎症時におけるこれらの物質の動態を遺伝子レベルで調べるために、まず、三叉神経節細胞におけるカルシウム結合蛋白質に対するmessanger RNAの分布をin situ hybridyzationの組織化学により調べた。三叉神経節では、多くの大型の神経細胞にcalbindin D28k(CB)やS100の免疫反応が、認められ、これらの神経細胞の一部は、他のカルシウム結合蛋白質であるcalretin in (CR)やparvalbumin(PV)をも含んでいた。ラットの臼歯歯髄には、CBやS100を含む線維が、豊富に観察され、逆行性軸策輸送法により、調べたところ、歯髄を支配する三叉神経節細胞の23%がCBを、50%がS100を含んでいた。また、ラットの舌下小丘付近の粘膜下にcomplete freund adjuvant(CFA)を10マイクロリットルをハミルトンシリンジにて注入し、5日後、免疫組織化学により、顎下腺管におけるCR,CGRP,SPの分布を調べた.未処置のラットの顎下腺管で、CR,CGRP,SP陽性線維は、導管周囲及び導管の上皮内に豊富に観察されたが、炎症顎下腺管では、CRの免疫反応のみ、全く認められなくなった。三叉神経節におけるCR mesengerRNAの発現を調べるため、バラフィン切片、固定凍結切片及び未固定凍結切片にin situ hybridization組織化学を行ったところパラフィン切片にのみsignalが観察され、凍結切片においては、全く認められなかった。CR mRNAは、比較的大型の細胞に局在し、小型の細胞には、まれであるというパラフィン切片における結果は、免疫組織化学により、得られた結果と一致していた。
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