研究概要 |
当該研究では,軟骨細胞の機能的な分化の解明に焦点をあて,これまでに,in vivoにおける軟骨組織の細胞増殖能や糖鎖合成能について,組織化学的な手法を用いて検討を行ってきた。 本研究の目的は,当初の研究計画ならびに方法に沿って遂行されつつある。すなわち,平成8年度には成長ホルモンが軟骨細胞のプロテオグリカンの糖鎖合成に著しい影響をおよぼすことを報告した(Jpn J Oral Boil,38:132-138,1996)。また,軟骨細胞は,とくに増殖細胞層において,成長ホルモンの制御を受けていることを明らかにした(J Histochem Cytochem,44:713-720,1996)。 続いて,ラット成長板軟骨では,成長ホルモンによって誘導される軟骨細胞の増殖と基質成分の産生が密接に相関することを報告した(第37回歯科基礎医学会,東京)。 さらに,腫瘍組織では,軟骨肉腫の発育・増殖には,EGF,IGF-I,FGFなどの成長因子のはたす役割が重要であることも報告した(第84回日本病理学会,名古屋)。このように,軟骨細胞の発育過程におけるin vivoでの代謝系の変化については,基礎的なデータが集積しつつある。 近年,IN situハイブリダイゼーションやPCR法の開発によって,細胞の遺伝子情報の解析が可能になってきた。今後は,本研究の目的に的確に対応してゆくために,これらの方法を導入し,生体移植性の軟骨肉腫細胞や卵巣摘出動物等の実験動物を使用して,組織細胞化学的,分子生物学的な検討を行ってゆきたい。
|