研究概要 |
「basic Fibroblast Growth Factor(bFGF)が局所での環境によっては,骨芽細胞の分化に影響を与え得る」という仮説をたて,1)骨芽細胞様細胞(OB群細胞)および対照に線維芽細胞(FB群細胞)を分離,培養し,その性状を観察し,2)OB群およびFB群細胞に対して,細胞の増殖という観点からbFGF至適濃度を検索し,3)OB群およびFB群細胞に対して,bFGFと血清との影響を明らかにした. その結果,1)採取した初代培養のFB群細胞のalkaline phosphatase(ALP)活性は,fetal bovine serum濃度にはほとんど影響されず,ほぼ等しい値を示した.2)採取した初代培養のOB群の細胞は,強ALP活性,高いPTH応答性を示したが,bone qla proteinは検出できなかった.3)細胞増殖からみたbFGFの至適濃度は,OB群細胞では0.4〜4.0(〜12.0)ng/ml,FB群細胞では4.0〜12.0ng/mlであり,低濃度のbFGFがOB群細胞には有用であった.4)OBおよびFB群の細胞増殖はbFGF刺激よりも高濃度のFBSに依存した.5)OBおよびFB群細胞のFGF-Rは,低濃度のFBS含有培地中では消失した.6)bFGFで刺激されたOB群の細胞では,ALP活性が著しく低下した. 以上のことから,血清量の変化でFGF-Rが制御されると同時に局所に存在したbFGFが消費され次第に濃度を減じ,線維芽細胞,内皮細胞および骨芽細胞の順に活性化される.bFGFの刺激を受けた骨芽細胞は,その分化度が高くなり,骨を形成する.すなわち,骨芽細胞の分化にもbFGFは影響することが示唆される.
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