研究概要 |
カルシウム(Ca)拮抗薬による薬物誘発性歯肉肥大に関するin vivoおよびin vitroの実験を行った. 1.in vivoの実験 i)フェニトイン(PHT)を用いた実験:各実験群のラットにPHTを飼料1g当り0,2,3,4または5mg混和して与え,40日間飼育した.その結果 (1)飼料中の薬剤量に比例して血中PHT濃度は上昇していた(順位相関係数0.740). (2)歯肉溝深さは各群,416±75(μm),517±84,500±67,529±45,612±91であり,歯肉肥大は血中PHT濃度と正に相関し,濃度依存性に重症化していた.雌雄間に差はなかった. (3)PHT投与群ラットの血中リン値は低く,葉酸は高値を示したが,Ca値に変化はなかった. ii)Ca拮抗薬とシクロポリン(CSA)の同時投与による影響 (1)300μgのCa拮抗薬(ニフェジピン:NF)投与群の歯肉溝深さNF300は635±97(μm)で,NF600:665±103(非投与対照群は475±42),CSA150μgの群は580±82であり,CSA300は904±104であったが,NF300+CSA150の群は605±99,NF600+CSA300は770±95となっていた. (2)NFとCSA同時投与で血中濃度は,単独投与に比べてNFで54%(NF300)または70%(NF600)となりCSAでは14%(CSA150)と18%(CSA300)に低下した. (3)Ca拮抗薬はCSAの血中濃度も低下させ,歯肉肥大を軽症化することが示された. 2.in vitroの実験 Ca拮抗薬を与えて歯肉肥大を発現させたラットから歯肉組織を切除し,組織中のアポプトーシスと関連する酵素トランスグルタミナーゼ(tGTase)の活性を測定した. (1)CSA投与ラットの全歯肉組織のtGTase活性は4366(dpm/mgタンパク)であり,ホモゲナイズ後の核と細胞質では2595であった.非投与対照ラットではそれぞれ1961と15403になっていた. (2)肥大組織の核のtGTase活性は弱く,細胞死による組織のリモデリングが障害されるため,増大をきたす可能性が示された.
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