研究概要 |
我々は,in vitroの実験系においてマウスマクロファージ細胞株であるJ774.1細胞に歯周病原生細菌のひとつであるActinobacillus actinomycetemcomitansを感染させると,細胞に致死的に作用することを明らかにした。さらに,この細胞致死活性の発現は,(1)エンドヌクレアーゼ活性阻害剤による致死活性の抑制(2)ELISA法によるDNA断片化の比色定量(3)2%アガロースゲル電気泳動によるDNA断片化の確認(4)Apop-Tag染色によるアポトーシス細胞の検出(5)Flow cytometryを用いた解析結果から,アポトーシスにより発現した可能性が強く示された。 A. actinomycetemcomitans感染によるJ774.1細胞の細胞死発現に,アポトーシスが関与する可能性が示されたことから,アポトーシス発現に至る情報伝達機構について検討を加えた。まず,A. actinomycetemcomitans感染の実験系にプロテインキナーゼ活性阻害剤を添加し,実験を行った。その結果,プロテインキナーゼC活性阻害剤により細胞致死活性は著しく抑制され,アポトーシス発現に際し,プロテインキナーゼCによる情報伝達機構の関与の可能性が示された。さらに,J774.1細胞の変異株であり,細胞膜上のCD14分子を欠失したLR-9細胞を用いてA. actinomycetemcomitans感染の実験を行ったところ、LR-9細胞での致死活性発現はほとんど認められなかった。Flow cytometerによる解析結果においても,LR-9細胞ではアポトーシス細胞は出現しなかった。この結果から,アポトーシス発現に細胞膜上のCD14分子が何らかの形で関与している可能性が示された。 以上の基礎研究をふまえ,ヒトから採取した歯周組織構成細胞を用いてA. actinomycetemcomitans感染の実験を行い,歯周病の発症および進行について,現在検討を加えているところである。
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