研究概要 |
本研究の目的は,歯冠補綴物の製作をコンピュータ制御の機械加工,特に光造形法により行うこと試みることである。まず最初に,光造形装置用加工精度改良キットにより,システムの改良を行った。それと並行して,装置全体の加工精度についても検討し,歯冠修復物を製作するための加工条件について検討を行った。その結果として,スキャン方向,レーザースポット径,スキャン速度などにより,加工精度が影響をうけることがわかった。この加工精度は同一機種であっても,マシン個々により特性があることがわかっている。また,制作方法により加工速度を向上させることも検討し,製作物の構造をハニカム構造など特殊な構造にすることにより製作時間をさらに短縮することが可能と思われた。 次に,光造形法で問題となる加工精度についての研究を行い,最適加工条件(レーザ出力:13mW,スキャンスピード:240mm/s,レーザスポット径:0.2mm,z方向の積層ピッチ:0.07mm,スキャン方式:Normalスキャン)を設定した。また,歯冠補綴物のデータは,(株)ニコン,(株)ジ-シ-,日立精工(株)が共同開発した歯冠補綴物作製用CAD/CAMシステムを用い,実際の患者の口腔内で形成した支台歯に対して,フルクラウンを設計し,これを元に有理ベジエ曲面パッチとして出力した後,光造形装置の制御用ワークステーションに入力した.次に加工条件の設定,シミュレーションを行い,樹脂モデルの作製を行った.これにより実際の患者の口腔内の支台歯に対するクラウンの樹脂モデル作製までの工程は確立され,作製されたクラウンの形態もCADの設計を忠実に再現するものであった。しかし,使用している樹脂の収縮率が大きく,支台歯に適合させるまでには,至らなかったのが今後の検討課題と考えられる。
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