研究概要 |
高齢社会への移行にともない,義歯装着者は今後も増加することが予想される.ここで,組織の変化をモニターする手段の一つとして,微少循環の把握がある.この微少循環の状態を確実に把握でき,検査項目に加えられれば,口腔組織の健康状態の把握はより確実となる. 本研究は,義歯の適切な設計条件を求める一助とするために,部分床義歯の設計条件と組織の血流量や血液量,歯肉溝滲出液量および齲蝕活動性について検討したものである. まず,測定部位として中高年齢者の歯頚部の歯肉退縮に関して検討し,特に義歯装着者においては,半数近く根面が露出しており,このことに配慮して歯頚部歯肉の測定部位を決定する必要のあることが明らかとなった. 次に,本研究に用いた半導体レーザー式組織血流計は,同一部位の組織血流量と血液量が同時測定できる特徴がある.この血流計のセンサー部を義歯に組み込むことを考慮し,先端にプラスチックファイバーを連結して測定することを検討した.この装置の口腔内での測定条件として,プラスチックファイバー間距離に関して検討し,1.0mmが血流量,血液量とも測定しやすいことがわかった. また,義歯床隣接面を通法に従い作製した場合には,支台歯辺縁歯肉の健康状態が悪化する傾向を示し,この部を大きく開放する場合には辺縁歯肉は良好な反応を示した.さらに,オーバーデンチャーのノンコーピング法は,齲蝕予防処置を確実に行うことにより,特に高齢者の補綴法として有効な方法であることが明らかとなった.また,口腔内の微少循環の測定が臨床においても容易に行える可能性のあることが示唆された.
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