研究概要 |
パ-シャルデンチャーの長期の成功のためには,各構成要素が咬合力などの外力により変形や破折を生じないことが重要である。そこで本研究では,構造物の応力を解析する上で工学分野でもっとも有用な方法であると認められている三次元有限要素法を用いて,パ-シャルデンチャーの構成要素に生じる応力の状態を立体的に解析した。 すなわち,本年度には以下の解析を行った。 1.臨床で頻用されるエーカースクラスプの三次元的解析を行った。従来は経験的にクラスプは先端の寸法が基部の寸法の半分で,断面は半円形が良いとされていたが,本解析の結果,先端は基部の0.8で,半円形より厚さが薄い方が応力集中が少ないことが明らかとなった。さらに従来は,クラスプの弯曲は応力緩和に有効であるとされてきたが,その形態によって有効性が異なり,逆に応力集中を生じる場合もあることが判明した。 2.鉤歯に為害作用の少なく力学的に有効であるとされているIバ-クラスプについて三次元応力解析を行った。Iバ-クラスプはその寸法に科学的根拠がなく,経験的に用いられてきた。そこで,形態をさまざまに変えて解析を行った結果,応力集中が少なく,適度な維持力の発現が見込まれる形態の一例を提示することができた。さらに,実際に患者に用いられているIバ-クラスプの寸法を計測し,それに対応する有限要素モデルを作製して検討した結果,その75%は維持力が大きすぎるか,応力集中を生じる不適切なものであることが判明した。 今後は,さらに各種のパ-シャルデンチャーの構成要素の解析を行うと同時に,それらを組み合わせてパ-シャルデンチャー全体としての応力解析を行う予定である。
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