研究概要 |
電気化学的特性値に及ぼす研磨の影響を明らかにするために、貴金属合金としてTypeIV金合金と金銀パラジウム合金、クロム含有合金としてNi-Cr合金(硬質)とCo-Cr合金、更にCPチタンを用いた。次に、0.05μmのアルミナによる鏡面研磨♯600耐水研磨紙による一方向研磨、150メッシュのコランダムを用いたサンドブラスト研磨を行ったものを試料とした。次に、(1)電気化学腐食測定装置(Potentiostat, Model273 & Corrosin software)を用い、分極抵抗の測定は、浸漬5分後の試料に、自然電極電位から±20mVの範囲で0.1mV/secの速度で電位を走査し、電位と電流密度の測定値から直線分極法により分極抵抗を求めた。動電位分極曲線は-1200mVから不動態破壊電位まで0.33mV/secの走査速度で分極を行った。腐食試験溶液は純窒素の通気によって脱気した0.9%NaCl溶液にを用いた。(2)走査型共焦点レーザー型顕微鏡を用いて研磨試料の表面積を計測した。(3)各試料を0.9%NaCl溶液に37℃で一週間浸漬した後の溶液に含まれるNi, Cu, Tiの溶出量を原子吸光分光光度計を用いて測定した。 以上の測定データを解析した結果、歯科用合金の溶出元素量、分極抵抗、動電位分極挙動は、研磨条件によって異なり、何れの合金においても、鏡面研磨された試料で溶出量ならびに不動態保持電流が最小となり、分極抵抗が大きくなる傾向を示した。また、過不動態電位は研磨の影響がほとんど認められなかった。更に、研磨面の表面積代替値は同一の粒度の研磨材であっても合金によって異なり鏡面研磨でほぼ同様な値を示した。従って異なった合金の耐食性を評価する場合、鏡面研磨が有効と示唆された。今後更に、電気化学的特性値と表面性状および溶出元素量の関係について詳細に検討する予定である。
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