研究概要 |
エンジニアリングセラミックスとして広く用いられているAl_2O_3およびZrO_2の酸化物は生体材料としても有効な材料である.そこで,これら酸化物に加えてSi_3N_4およびTiNの窒化物およびTiCの炭化物の焼結体を用いて,in vitroにおける細胞接着性からこれら材料の細胞適合性について検討を行い,他のエンジニアリングセラミックスの生体材料としての可能性について検討した.さらに,チタンおよびチタン合金表面に対して加熱酸化処理を行い,動的接触角およびずり応力負荷後の細胞残留割合から求めた相対細胞残留率によって酸化処理の影響を評価した.その結果,今回用いた5種類のエンジニアリングセラミックスは,対照とした培養用プラスチックシャーレに匹敵する相対細胞接着率を示した.このことより今回用いた材料が加工技術の進歩や他の材料との複合化によって新しい生体材料として有望であることが示唆された.また,チタンおよびチタン合金の加熱酸化処理によって,水に対するねれが小さくなり親水性を変化させることができたが,細胞の接着性には大きな変化を認めなかった.また,いずれの条件においても,ずり応力の負荷時間に伴って,細胞残留率は減少した.これらの結果は今後,さらに使用目的に適合した表面構造を創製することの重要性とその際の評価法として多面的に捕らえられることの必要性を示すものである.
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