研究概要 |
抗菌活性を有するメタクリル系モノマーを合成し,義歯床用レジンの液に配合して重合することによって,レジン床義歯への抗菌性の付与をはかった.平成7年度は主として抗菌活性が期待される分子骨格を有する抗菌性モノマーの合成を行った.合成した抗菌性モノマーは,キノリン環,イミダゾール環,イソシアヌル環およびトリアゾール環を有するメタクリル系モノマーで,数十種の合成モノマーの中から,市販抗菌剤の構造等を考慮して8種のモノマーを選択した.平成8年度では,これらのモノマーを配合した市販の加熱重合型アクリルレジンについてCandida albicans菌液へ浸漬した後の付着菌数を測定することにより,抗菌活性を評価した.その結果,測定の終了した4種のモノマーはいずれも床用レジンへの菌の付着を減少させ,抗菌活性が得られることが明らかとなった.しかし,このうちの3種は四級化モノマーであり,床用レジンのモノマーとの相溶性がきわめて小さい.このため,床用レジン中に配合できるモノマー濃度が制約を受ける.一方,非四級化モノマーも四級化モノマーと同程度の抗菌活性を示したことから,歯科用レジンへ任意の濃度で配合するためには非四級化構造の抗菌性モノマーの応用が有望であることが示唆された.また本研究で検討した抗菌性モノマーは床用レジン中に配合しても理工学的性質の低下は認められなかったことから,床用レジン中への配合のみならず,コーティング剤やティッシュコンディショナ-への応用の可能性も示唆された.
|