本研究の目的は、腺様嚢胞癌患者から採取した癌組織の凍結切片を、ギャップ結合を構成する蛋白に対する抗体を用いてABC法で免疫組織学的に染色し、その染色態度からギャップ結合の変化の程度を症例ごとに検索し、転移に関して既に得られた臨床的あるいは病理学的なデータと比較検討し、腺様嚢胞癌におけるギャップ結合の変化と転移との関連を明らかにすることにあり、以下の研究を行った。 研究対象として、唾液腺腺様嚢胞癌患者より採取し保存してある凍結癌組織および正常唾液腺組織を用いて、クライオスタットにて凍結組織を薄切りし切片を作製した。免疫染色はABC法にてコネクシン32およびコネクシン43・ギャップ結合蛋白抗体を用いて染色した。免疫染色した標本切片を、各症例ごとに10視野に100個の腫瘍細胞について、免疫染色陽性部を2種類の抗体それぞれについてカウントし、光学顕微鏡と画像解析装置を連結してギャップ結合蛋白量の数量化を試みたが、染色態度が複雑なために肉眼的にカウントすることが困難であったことから、画像解析装置をパーソナルコンピューターに直接接続することによって、より信頼度の高いデータが得られることから設備備品としてパーソナルコンピューター(Power Macintosh 7500/100)を購入し本研究に寄与させた。対象を正常群、腺様嚢胞癌患者の転移陽性群と転移陰性群の3群に分け検討した結果、正常群と癌患者群では、後者の方でギャップ結合の減少がみられたが、転移陽性群と陰性群では明瞭な差は認められなかった。また、コネクシン32抗体とコネクシン43抗体との間にも明瞭な差はみられなかった。本研究結果で用いたコネクシン抗体では、腺様嚢胞癌の転移を予測することは難しいことから、他のコネクシン抗体での検討が今後の課題である。
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