研究概要 |
緒言:当科ではTPP術前動注化学療法について臨床的検討を行い高い奏効率を報告しているが、THP-ADMの先行投与の意義については十分に検討されていない。今回THP-ADMの先行投与が後続薬剤CDDPの組織移行性への影響に関して実験的に検討したので、その概要を報告する。 対象および方法:日本白色家兎の足背部に移植したVX2癌にTHP-ADMを先行動注あるいは静注し、CDDP投与時間をTHP-ADM投与後0,5、24、48時間の6群に分け、CDDPの血漿中、腫瘍内およびリンパ節内の濃度を,CDDP単独動注群を対照として検討した。 結果:CDDP濃度は、単独動注群(n=4)で腫瘍内濃度2.898±1.213μg/g、リンパ節内濃度1.195±0.818μg/g、血漿中濃度1.785±0.362μg/mlであった。動注0.5時間群(n=4)で、腫瘍内濃度0.815±0.199μg/g、リンパ節内濃度1.375±0.427μg/g、血漿中濃度1.352±0.150μg/mlであった。動注24時間群(n=7)で、腫瘍内濃度1.533±1.973μg/g、リンパ節内濃度3.391±1.991μg/g、血漿中濃度1.793±0.512μg/mlであった。動注48時間群(n=4)で、腫瘍内濃度1.425±1.243μg/g、リンパ節内濃度2.903±1.182μg/g、血漿中濃度2.085±0.706μg/mlであった。血漿中濃度は各群間に有意差なかった。腫瘍内濃度では0.5時間群で他群に比し有意(P<0.05)にCDDP濃度が低値であった。リンパ節内濃度では、24時間群はCDDP単独投与群と0.5時間群より有意(P<0.05)に高値であった。動注24時間群のリンパ節内CDDP濃度は,静注24時間群と比べp<0.05で有意に高値であった。静注群間の腫瘍・リンパ節・血漿内濃度に差はなかった。 考察:THP-ADMの先行投与が後続薬剤CDDPの組織移行性に影響を与えていることが示唆され,THP-ADMとCDDPの併用効果に反映したものと考えられた。2剤の併用効果は,Biochemcal Modulationの1つと言える。また,当科でのTPP療法が妥当なレジメンであることが裏付けられた。
|