研究概要 |
麻酔および手術侵襲が生体のサイトカイン産生に及ぼす影響について調べるために以下の実験を行った。 (方法) 静脈麻酔薬であるペントバルビタールを投与し,PaO2,PaCO2が正常範囲になるよう経気管的に人工呼吸器により調節呼吸を行った。術中は,血圧,心電図,心拍数,体温(直腸体温計)のモニタリングを行い経時的に測定を行った。術中の麻酔維持は,ペントバルビタールを臨床症状にあわせて適宜,静脈より投与した。採血は,静脈確保直後,麻酔薬投与直後,以後30分毎に行い,血中サイトカイン(TNF,IL-1,IL-6)濃度を測定した。 (結果) 1.麻酔中は,血中サイトカイン(TNF,IL-6)に有意な変動はみられなかった。 2.手術侵襲に伴い,血中のIL-6は上昇した。 3.手術侵襲に伴い,血中のTNFには有意な変動はみられなかったが,一部上昇する症例もみられた。 4.いずれの試料についてもIL-1は検出することができなかった。 麻酔および手術中,臨床上問題となるような異常はみられなかった。 (考察) 以上のことから,静脈麻酔薬(ペントバルビタール)は血中サイトカイン(TNF,IL-6)の変動に対して影響が少ないものと思われる。また,血中サイトカインの中では,IL-6が最も明確に変動することが考えられた。
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