研究概要 |
口腔癌の放射線治療時において,その悪性度ならびに治療効果の判定をより客観的に判定することが出来るようにするため本研究を行った。一時治療に放射線治療を行った18例の口腔扁平上皮癌症例に対し,^<60>Co,2Gy×5回/週の照射で,10Gyごとに扁平上皮癌細胞と照射野に含まれる病巣周囲の正常細胞の双方から剥離細胞を採取し,本研究システムを用いて顕微分光測光を行い,核内DNAに関して各種のパラメーターを用いて解析を行った。測定パラメーターの変化としては,核DNA量は,10Gy照射時に軽度上昇した後に減少していた。平均核DNA密度は,照射線量の増加に応じて減少し,正常細胞の値に近づく傾向が伺われた。さらに本システムによる画像解析を行い,核内DNAの分布状態を反映した新しいパラメーターである「密度得点」を用いて検討を行った。密度得点が,照射の比較的初期より減少する症例は7例(38.9%)で,その傾向の現れる線量は10Gy時は3例,20Gy時2例,30Gy時1例,50Gy時1例であった。また,密度得点が10Gy照射時に一度増加した後に減少する症例が6例(33.3%)あり,双方を合わせると13例(72.2%)が照射過程で減少傾向を認めた。一方,密度得点が線量の増加にも関わらず変動の少ない例の3例(16.6%)や,照射初期から密度得点の増加傾向を示す例の2例(11.1%)では,治療効果が不良と思われる症例であった。口腔扁平上皮癌の放射線治療時の経線量的な密度得点の変動グラフのパターンを検討し,より早期に低下傾向を示すかを判定することが,放射線治療効果判定に有用であることが伺われた。
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