リウマチ滑膜において、精神・神経系や免疫系に作用を有する神経ペプチドの産生が確認されている。そのため、精神状態と滑膜、免疫系が相互に作用するひとつのネットワークを形成している可能性が指摘されている。また、口腔外科領域の疾患のひとつである顎関節内障においても、その発症と病態の推移に心理的要因や滑膜炎の関与が重要視されている。そこで、今回私は、顎関節滑膜炎における神経系の関与を検討するために、実験動物を用い顎関節滑膜炎を誘導し、神経ペプチドの発現を免疫組織化学的手法により検索した。 生後4週齢ラットに臼歯抜歯を施し、術後2日目、1週目、4週目に屠殺し顎関節組織を採取した。術後1週目ラットでは、滑膜への炎症性細胞の浸潤、特に著明なCD4陽性細胞の出現を認めた。そのCD4陽性細胞の一部はトランスフェリンレセプターを発現しており活性化Tリンパ球であることが推測された。また、オピオイドペプチドのひとつであるエンケファリンに対する一次抗体およびDAKO社製LSAB2(Peroxidase)キットを用い、免疫組織化学的染色を行ったところ、1週目ラット顎関節滑膜組織の一部にエンケファリン陽性細胞の分布を認めた。また、顎関節軟骨においても成熟細胞層から肥大細胞層にかけてエンケファリン陽性部位が観察された。軟骨層における陽性反応は対照群の正常ラットにおいても認められたことから、エンケファリンの下顎頭軟骨内骨化機構への関与も推測された。今後、滑膜炎におけるCD4陽性細胞の発現と、エンケファリン陽性細胞の分布をさらに詳細に検討する予定である。
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