研究概要 |
口腔扁平上皮癌における副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)発現と画像診断による顎骨浸潤の関係を54例の口腔扁平上皮癌症例で検討した.軽度高カルシウム血症を呈する1例を除く53例98.1%において生検組織内PTHrPの発現がみられた.しかし,画像診断(X線写真検査,骨シンチグラフィ)における顎骨浸潤と血清C-PTHrP濃度,生検組織内PTHrP発現との間に明かな関連を認めることはできなかった.骨浸潤局所の組織での発現は検討していないので,これらの結果よりPTHrPの口腔癌顎骨浸潤への関与を直ちに否定することはできない.PTHrPが腫瘍の顎骨浸潤能を予測するマーカーとなれば治療計画立案や予後の経過観察に有用となると思われるがこれらの結果から,生検組織のPTHrP発現程度から顎骨浸潤に対する腫瘍の性格を予測するのは困難と思われた.口腔扁平上皮癌60症例の治療前の腫瘍細胞の分化度,浸潤度分類,大きさ等の臨床パラメーターとradioimmunoassayによる血中PTHrP濃度,及びimmunohistochemistryによる癌組織内PTHrP発現との関連を検討した.口腔扁平上皮癌一次症例で治療前の凍結血清が保存され,組織生検が行われた症例である.抗PTHrP(1-34)抗体使用による癌組織内発現と角化および悪性度(Anneroth分類)との間に有意な関係が認められた.PTHrP発現は口腔粘膜の角化や分化,および悪性度と関連があると考えられた.PTHrP遺伝子のプロモーター領域の解析:凍結口腔癌組織抽出PTHrP遺伝子のプロモーター領域の塩基配列解析はABI Prism Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kitを用い,また同領域のメチル化はsouthern blotting法により解析続行中である.Exon 1C,5′flanking regionのprobeが作製されその配列はDye Terminator法により塩基配列が確認済みである.
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