血管内の血流と血管の形態についてコンピュータシミュレーションによって検討した。サルによる心血管系の3次元モデルを作成し、この形態を計測し、脈管内腔の3次元情報を得た。この数値をコンピュータに入力し、流体解析ソフトウエアであるアルファーフロウを用いて、有限要素モデルとして構築した。またヒトの冠動脈造影写真を計測し、脈管内腔の2次元情報を得、同様に数値をコンピュータに入力し、有限要素モデルとして構築した。またモデルには、冠動脈疾患を想定した狭窄を加えたものも用いた。このモデルに、脈流を想定した血流を加え、また血液のレイノルズ数を変化させる事により血液の性状も変化させて脈管内の血流の推移をコンピュータシミュレーションにより検討した。その結果、脈管内の血流は冠動脈疾患を想定した狭窄によって変化するものの、この変化は臨床上予想される変化より大きいものであった。このことは、冠動脈の内腔が圧力に依存して拡張するために、相対的に狭窄率が減少するためであると思われ、血管内腔(血管断面積)の変化が大きな影響を与えている事がわかった。このことは血管コンプライアンスが影響している事を示唆している。またレイノルズ数が大きくなると血流に大きな影響を与え、冠動脈圧が過大になることを確認した。またサルとヒトとの比較では、ヒトは相対的に大きいために同一レイノルズ数では圧力が下がる事がわかり、この分野での動物実験の限界を示唆した所見を得た。
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