今回は、予備実験として実験動物にビ-グル犬を用い条件の画一化を図った。実験は、上顎両側の上顎第一臼歯を抜歯した後、犬歯第二臼歯間の近心口蓋粘膜をコの字型に骨膜ごと剥離し、トレファンバーにて直径5mmの実験的骨欠損部を作成した。右側をコントロール側(実験的骨欠損のみ作成)、左側を実験側(脱灰骨粉末移植群)とした。1.Critical size defectの確認。2.実験的歯の移動による組織学的変化の観察、の2点を目的とした。実験的歯の移動は上顎第二臼歯を100g Ni-Ti closed coil springにて近心移動させた。観察は骨欠損部が移植により修復されると予想される8週と、移植部に移動した歯が到達すると予想される6週間を加えた14週に行なった。固定後PR脱灰し、通法に従い、パラフィン包埋、前頭断切片を作成し、光学顕微鏡にて観察した。 この結果、8週時点でコントロール側では、近遠心的連続性の回復はなされていないものの、実験側では連続性の回復はなされ、この時点におけるcritical size defectが確認された。また、移植後8週から移動を6週行った14週時点でコントロール側では近心傾斜が認められるものの近遠心的連続性の回復はなされていなかった。一方、実験側では近心傾斜が弱く、破骨細胞による吸収像が確認された。この時、核となる脱灰骨粉末は周囲新生骨と比較して吸収されにくい傾向が確認された。 今後は、脱灰骨粉末の他、自家海面骨(自家腸骨稜より採得)、rhBMP(担体:山之内製薬より提供していただけるものを使用する予定)を移植し、それらの比較検討を行い、実験的骨欠損部の修復過程の差異を組織学的に観察するとともに、実験的歯の移動の際に、担体として何がふさわしいのか検討していく。
|