研究概要 |
歯髄および歯石を試料として,PCR法によるHLADQα型(239/242bp)およびPolymarker(PM^R:LDLR(214bp),GYPA(190bp),HBGG(172bp),D7S8(151bp),GC(138bp))型検査を行い,それぞれの遺伝子型および遺伝子の出現頻度について検討した。また各ローカスの組合せによる個人識別の有用性についても検討した。 【試料・方法】試料は歯科治療時に採取した新鮮歯髄76例・新鮮歯石10例,および1〜10年間室内に放置した歯から採取した陣旧歯髄19例である。DNA抽出は歯髄は洗浄・乾燥した後に細切し,また歯石は洗浄・0.5M EDTAで半日脱灰した後,通法に従い行った。PCR増幅は,HLADQα座位ではパーキンエルマ-社のAmplitype^<TM>キットに,またPM^R座位では同社のAmplitype^RPMキットのプロトコールに準じた。DNA型検出はリバース・ドットブロット・ハイブリダゼーション法により行った。 【成績・考察】歯髄95例および歯石10例についてHLADQα型およびPM^R型検査を行ったところ,すべての例で型検出は可能であった。HLADQα型の遺伝子型は21タイプのうち11タイプが出現した。1.3-3型が24.2%と最も多く,ついで3-3型21.1%,1.2-3型18.9%および3-4型13.7%の順であった。遺伝子の出現頻度は3が52.6%と最も多く,ついで1.3が16.8%,1.2が13.7%,4が12.1%および1.1が4.7%の順であり,2の遺伝子は認められなかった。ある集団の中で任意の2人を選んだ時,その2人の型が異なって判定される識別率(power of discrimination, PD)を算出した結果,0.8302であった。一方,PM^R型検査では,各ローカスの遺伝子数は2ないしは3個であるために,各ローカスの遺伝子型数による各PDは低いが,PM^R型としてのPDは0.9925であった。HLADQα型およびPM^R型による総合PDは0.9987であり,個人識別能は極めて向上した。以上,各遺伝子座位のallele sizeは小さいことから,低分子化したDNAの型検出には適していると考えられた。STR(short tandem repeat)型分析は,現在,実験継続中である。
|