研究概要 |
小児の成長発育に伴う歯の萌出段階による咬合が顆頭の運動や顆路に対してどのように関係しているのかを明らかにすることを目的として本研究を行った. Hellman's dental stage IIA期,IIC期,IIIA期,IIIC期の小児20名(40関節)についてコンピューターアキシオグラフ(CADIAX)を用いて,下顎の基本的限界運動としての前進後退運動,側方運動および開閉口運動の顆頭の運動経路について計測を行った.その結果,以下の結論を得た. 1.すべてのステージにおいて,矢状面における顆路の形態は,Concave型であった. 2.IIA期における顆頭の最大滑走量は,前進後退運動で9.8mm,側方運動で11.5mm,開閉口運動で13.0mmであり,他のステージよりも有意に小さい値を示した. 3.開閉口運動時における顆頭の最大回転量は,IIA期で38.1°,IIC期で35.0°,IIIA期で33.2°,IIIC期で31.1°であった. 4.前進後退運動時における顆頭の滑走量が5mmの時の水平顆路角は,IIA期で37.3°,IIC期で41.6°,IIIA期で46.6°IIIC期で46.3°であり,IIA期は他のステージと比較して有意の差が認められた. 5.IIA期では,滑走運動量が小さい割には回転運動量が大きい傾向が認められた. 6.開口運動時の顆頭の回転および滑走運動の関係は,初期ではIIA期とIIC期は回転運動主導型,IIIA期とIIIC期は滑走運動主導型を示した.中期では各ステージともに回転および滑走運動が均等に発現し,後期では回転運動主導型であった. 7.開口運動経路と閉口運動経路における顆頭の回転および滑走運動の発現様相に違いが認められた.
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