研究概要 |
キラルC_2対称分子は近年,不斉合成において不斉配位子およびキラル補助基として極めて重要な役割を果たしている.さらにキラル合成素子としても注目され,また最近ではHIVプロテアーゼ阻害剤などの興味ある生物活性物質も見いだされている.このような背景を基に対称型末端ジエンにシャープレスの不斉ジヒドロキシル化(AD)を行えば,エナンチオ制御面が二箇所あることから,C_2対称なテトラヒドロキシル体が生成すると考えた.さらにこの方法は,二箇所のオレフィンのジヒドロキシル化が独立の選択性で起きると仮定すれば,その相乗効果で一箇所のジヒドロキシル化に比べ,はるかに高い不斉選択性で光学活性体が得られることが期待され,目的とするC_2対称テトラヒドロキシル体合成に極めて有効と考えた.実際,予想通り高い光学純度でC_2対称テトラヒドロキシル体が生成し,最終的にキラル補助基として期待されるC_2対称α,α'位二置換ピペリジン,モルフォリンおよびピロリジン体に変換することができた.更に,このC_2対称体の精製の際,極めて稀な非キラルなクロマトグラフィーにおける光学分割現象に遭遇し,新らたな知見を得た.今回の研究過程で得た最大の収穫は,一箇所のAD化では比較的に光学純度が低くても,もう一箇所分子にオレフィン部を創製して再びAD化を行えば,主成績体は光学純度の向上化が期待されることである.現在この考えに沿って分子設計し,生物活性物質の不斉合成をおこなっている.
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