研究概要 |
本研究は、(1)15および16族重元素からなる複素環化合物の合成と、その構造化学的な特徴や安定性、反応性などの化学的な諸性質の解明、(2)本研究で得られる15族元素化合物の光学活性体の単離とその安定性、ラセミ化に関する基礎的な情報の収集を目的に実施されたものである。 1.分子内ジリチオ化合物と15,16族重元素からなる親電子試薬との閉環反応を利用することによって、理論的に可能な全て(3種)のチエノメタロール類、3-ベンゾメタレピン類、芳香環が2つ縮合したジベンゾ-およびジチエノ-メタレピン類の簡便な一般合成法を確立することができた。さらに、ここで得られた化合物の構造化学的な特徴や安定性、反応性などが周期表の周期や族の違いによってどのように変化するかなどを系統的に明らかにした。また、本法は遷移金属を含む複素環の合成にも応用されコバルタインデン類の合成にも成功するとともに、これがキノリン、イソキノリン、チオクマリンなどの様々な複素環合成の新しい前駆体になることを示した。本法の特徴は、上記のように同一の原料から、単に親電子試薬の種類を代えることによってさまざまな有機金属化合物の合成を行えることにある。本法は、上記以外にも新規な6,9,10員環有機金属化合物の合成にも適用できることも一部判明しており、今後の発展が大いに期待される。 2.これまで例のない光学活性な有機アンチモン(III)およびビスマス(III)化合物の単離を目的に、15族重元素からなる1-ベンゾヘテロール類の不斉酸化を検討した結果、対応する化合物が安定な光学活性体として単離可能なことを初めて明らかにした。また、これらはの光学純度はpd試薬などによって決定できることなども判明している。現在、より効率的な光学活性体の分離法の確立、これらを利用した新規な不斉合成反応の開発に取り組んでいる。
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