研究概要 |
生理活性鎖状1,3-ポリオール構造を有する天然物の一群として、強力な抗真菌活性を示すポリエンマクロライド抗生物質があり、そのうち数種は医薬品として臨床で用いられている.しかし、一般に副作用が強いために、天然物自体の構造改良あるいは化学合成による類縁体などの合成による毒性の軽減と効力の増強が切望されている. 本研究では、上記の課題に対する基礎研究として、1989年に単離構造決定された30員環ポリエンマクロライド・ロキサチシンの全合成研究を行った.合成の遂行にあたっては、ロキサチシンを3つのフラグメント、すなわちポリオール部、アルキル鎖部、ポリエン部に分割し、その各々を合成し、それらを順次連結してロキサチシンを全合成する方法を採用した. ポリオール部の合成は我々が開発した四炭素増炭法と1,3-不斉還元法を組み合わせて行い,アルキル鎖部はEvansの不斉アルドール反応を用いて行った.ポリエン部の合成はwitting反応を用いて合成した.最後にポリオール部とアルキル鎖部をJulia反応にて結合し、これにHorner-Emons反応でポリエン部を連結してセコ酸を合成し、これをマクロラクトン化反応に付してロキサチシンの全合成を達成した.
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