研究概要 |
ラジカル環化反応における立体化学の制御、特に「不斉合成」は一般に困難とされ、その成功例は少ない。申請者らは最近、窒素原子上や側鎖にキラル中心を有するN-ビニル-α-ブロモアミドが4-exo-trig型ラジカル環化反応を起こして光学活性β-ラクタムを与えることを見いだした。本研究はこのような「不斉ラジカル環化反応」をより広く検討し、(-)-1β-methylcarbapenemをはじめ、他の生理活性アルカロイドの光学活性体の合成に展開しようとするものである。当該研究期間中に得られた具体的な成果について以下に列挙する。 1,窒素原子上にキラル補助剤として(S)-1-phenylethyl基を持つラジカル前駆体2-bromo-N-[2-(m-methoxyphenyl)-2-phenylthio-1-ethenyl]butanamideのラジカル環化反応を行うと、脱硫後(3R,4S)-2-azetidinoneが主成績体として得られ、これを(+)-PS-5の重要合成中間体に導いた。 2,(2R,3S)-3-acetoxy-2-bromo-N-[2-(m-methoxyphenyl)-2-phenylthio-1-ethenyl]butanamideのラジカル環化反応を行うと、(3S,4R)-2-azetidinoneが主成績体として得られ、これを(+)-thienamycinの重要合成中間体に導いた。 3,窒素原子上にキラル補助剤として(S)-1-phenylethyl基をもつ(2R,3S)-3-acetoxy-2-bromo-N-[2-(m-methoxyphenyl)-1-propenyl]butanamideのラジカル環化反応を行うと、(3S,4R)-2-azetidinoneが主成績体として得られ、これを(-)-1β-methylcarbapenemの重要合成中間体に導いた。 4,窒素原子上にキラル補助剤として(S)-1-(1-naphthyl)ethyl基をもつN-(cyclohexen-1-yl)-α-bromoacetamideのラジカル環化反応は92:8のジアステレオ選択性でオクタヒドロインドロン誘導体を与えた。
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