研究概要 |
今、最も活発に合成的、薬理学的研究が展開されている抗腫瘍性物質の一つに、デュオカルマイシン類(CC-1065を含む)が挙げられる。その中でも1990年に発見されたデュオカルマイシンSA(DSA)は最も高活性、かつ化学的に安定であり、その細胞増殖抑制活性は、マイトマイシンCやアドリアマイシンなどを遙かに上回る。我々は、独自の手法を組み込んだDSAの実用的合成ルートの確立、及びその活性増強と選択性向上を目指した種々類縁体の合成を検討した結果、以下の研究成果をあげることが出来た。 (1)デュオカルマイシンSAの3,7,8,9-tetrahydro-4,8-dihydroxy-6H-pyrrolo[3,2-f]quinoline誘導体を共通中間体とする3種全合成ルートを確立した。ジヒドロピリジンに対する酸化的求核試剤導入法と分子内Heck反応を利用した第一合成法に加え、2回のPd触媒反応を応用してフェノール環を形成する第二合成法は、総工程数、及び総収率の観点から、より実用的なルートといえる。両合成法で得られた上記中間体を光学分割後、不要な非天然型対掌体の2級水酸基を反転し、天然型として再利用可能な光学選択的合成法である。さらに、Lーリンゴ酸を不斉源とする第三合成法は、独自に確立した高度官能基化インドール閉環法を活用することによる、デュオカルマイシン系抗生物質では初の光学分割に依らない光学活性体合成法である。 (2)上記第一、第二合成法を応用してデュオカルマイシンSAのA環部(ピロール環)をフラン、チオフェン環に替えた誘導体を合成した。現在、更に6位窒素置換基、及び2位エステル部位を修飾した類縁体を調製し、それらの抗腫瘍活性を評価すべく鋭意検討中である。
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