研究概要 |
高等動物においてはL-アミノ酸のみが生命の維持や機能の恒常に関与していると固く信じられていた。しかし、近年dermorphinnやdeltorphinやachatin等のようにD-アミノ酸が組み込まれたペプチドがカエルの皮膚やアフリカマイマイの神経節やクモの毒腺から発見されている。また製剤化技術の進歩に伴ってインスリンや成長ホルモン等多くの微量の生理活性ペプチド類が医薬品として疾病の治療に供されている。しかし天然型ペプチドは医薬品としての安定性が不十分であったり、副作用が強い等の問題があることがある。これらの欠点を補うために天然型のペプチド中のアミノ酸の一部をD-体に置換した生理活性ペプチドアナログを医薬品として開発することが試みられている。しかし従来利用されているエドマン法ではペプチドのD,L-アミノ酸を決定できない。このような背景から、ペプチドのD,L-アミノ酸を識別する方法の確立が熱望されている。我々は、キラルエドマン法用光学活性蛍光標識化試薬(DBD-PyNCS,NBD-PyNCSのR-体およびS-体)新規に開発した。これらの試薬は、D/L-アミノ酸等のアミノ基と反応し蛍光性の誘導体を生成した。アミノ酸のチオカルバモイル誘導体は強酸性条件下チアゾリノンを経てチオヒダントイン体に誘導された。このチオヒダントイン体は逆相液体クロマトグラフ-蛍光検出法により高感度で分離検出されD/L-アミノ酸を識別できた。確立した方法を繰り返すことにより、ペプチド中のD/L-アミノ酸の逐次配列分析が可能となった。本法を[D-Ala2]-leucine enkephalinやdeltorphin IIに応用し良好な結果を得ている。
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