研究概要 |
胎児性胆汁酸生合成経路の解明のために,以下の事項を検討した. 1)胆汁酸生合成中間体の合成 胆汁酸生合成中間体であるC_<27>-胆汁酸およびそれらの立体異性体を新たに開発した合成法を用いて化学合成した.また胎児性胆汁酸生合成前駆体と推定されたC_<27>-胆汁酸の合成も行った. 2)胆汁酸生合成中間体の分析法の開発 上記合成標品を用いて,ガスクロマトグラフィー・質量分析計および高速液体クロマトグラフィーによる的確な微量一斉定量分析法を開発した. 3)ラット肝を用いた代謝研究 胎児性胆汁酸前駆体と推定されるC_<27>-胆汁酸を基質としてラット肝による代謝産物の定量分析を行った.その結果,胎児性胆汁酸生合成経路の解明に向けた新たな知見が得られた.さらに,胆汁酸生合成経路におけるβ-酸化系酵素の基質特異性について検討し,ステロイド母核上の水酸基数が側鎖開裂にも影響を及ぼすことを明らかにすることができた.また,生合成中間体の立体化学についても検討し,中間体である24-水酸化コレスタン酸は(24R,25R)-及び(24S,25S)-体が主として生成することを明らかとした. 4)先天性胆汁酸代謝異常症の解析 Zellweger患者尿中の胆汁酸を定量分析を行った。その結果、胆汁酸生合成中間体であるC_<27>-胆汁酸が大量に蓄積し,明らかに酵素欠損による異常が認められた.さらに,従来認められていなかった(24Z)-3α,7α,12α-trihydroxy-5β-cholest-24-en-26-oic acidの存在が確認された.
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