一次構造が未解析であったヒト肝ジヒドロジオール脱水素酵素DD1について、リシルエンドペプチターゼ消化断片の解析を行った。その結果、決定された277残基のアミノ酸配列は、既報のcDNAクローンC9から推定されるアミノ酸配列と一致することが明らかになった。同様に、ヒト肝DD2についても294残基を解析し、その配列はcDNAクローンc81/RACEでコードされるタンパク質と一致することも明らかにした。以上のように、蛋白質化学的解析結果に基づいて、DD2およびヒト肝胆汁酸結合蛋白質のcDNAとされていたものは、実際にはDD1をコードすること、またDD2はc81/RACEのコードする蛋白質は同一であることを示した。 肝機能診断薬であるブロモスルフォフタレインの酵素活性に及ぼす影響を検討し、本化合物はDD4を活性化し、本化合物の構造類縁体であるフェノールフタレインがDD4の強力な阻害剤であることを見い出した。反応速度論的解析から、フェノールフタレインは酵素・補酵素複合体を形成している酵素の基質結合ポケットの中または近傍に結合するものと考えられた。また、DD4による還元代謝を受ける薬物ケトンとブロモフルフォフタレインの同時投与の場合には、薬物ケトンの代謝が著しく変化し、予期しない副作用の出現に至る可能性が示唆された。 ヒト肝DD4のC末端側39残基をDD1の相当部分と置換したキメラ酵素について、各種胆汁酸に対する反応性を検討し、置換したC末端部分が7β-および12α-水酸基をもつステロイド分子に対する特異性に関与することを見い出した。また、DD4に対して強力な阻害剤となるステロイド系抗炎症剤による影響を反応速度論的に解析し、C末端部分が非競合または不競合阻害を示すステロイド系阻害剤との結合に大きく関与することを明らかにし、その結合部位も立体的には活性部位近傍に存在することを示唆した。
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