研究概要 |
1.サブスタンスPのスコポラミン誘発自発的交替行動障害に及ぼす作用 (1)サブスタンスPは,スコポラミン誘発自発的交替行動障害を有意に改善した. (2)サブスタンスPによる改善作用は,タキキニンNK-1受容体拮抗薬のWIN 62577によって拮抗された. 2.デルモルフィン誘導体Tyr-D-Arg-Phe-β-Ala-NH_2(TAPA)の受動的回避学習に及ぼす作用 (1)μ-オピオイド受容体に高い親和性を有するTAPAは,受動的回避学習を著しく阻害した. (2)TAPAによる受動的回避学習障害は,β-フナルトレキサミンによって拮抗された. 3.受動的回避学習,高架式十字迷路学習および自発的交替行動に及ぼすガラニンの作用 (1)ガラニンは,高架式十字迷路学習あるいは自発的交替行動にほとんど影響しなかったが,受動的回避学習を著しく阻害した. 4.シクロヘキシミド誘発受動的回避学習障害に及ぼすダイノルフィンA-(1-13)の全身投与による作用 (1)ダイノルフィンA-(1-13)を腹腔内投与すると,シクロヘキシミド誘発受動的回避学習障害は改善された. (2)ダイノルフィンA-(1-13)による改善作用は,ノルビナルトルヒミンによって拮抗された. 5.学習・記憶に及ぼすδ-オピオイド受容体作動薬の作用 (1)[D-Ala^2,NMePhe^4,Gly-ol]エンケファリンおよびデルトルフィンは,受動的回避学習を阻害したが、自発的交替行動あるいは高架式十字迷路学習にはほとんど影響しなかった. 以上の結果より,μ-およびδ-オピオイドペプチド並びにガラニンは健忘を誘発するが,サブスタンスPおよびダイノルフィンは抗健忘作用を有することが明らかになった.さらに,ダイノルフィンの抗痴呆薬としての有用性が強く示唆された.
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