研究概要 |
癌原性化合物である2-ナフチルアミンの新規代謝物として二分子がカップリング縮合したジベンゾフェナジン類を同定とすることを第一の目的とした。本新規代謝物は平面性縮合芳香環であり、その点でベンツピレンと類似していることに注目し、ベンツピレン同様の生体障害作用を有しているかも検討し、以下のことを明らかにした。 1) 2-ナフチルアミンを基質とした薬物代謝酵素P450化学モデル系の反応を種々行い、すでに得られているジベンゾ[a,h]フェナジン以外の異性体の生成を検討したが他の代謝物候補は得られなかった。 2) ラット肝ミクロソームを用いた検討より、シトクロムP450によっても2-ナフチルアミンのカップリング縮合が進行しジベンゾ[a,h]フェナジンが新規代謝として生成することが示せた。ラット肝ミクロソームでは他にも新規カップリング縮合代謝物が生成していることがGC-MSより推測できたが同定には至っていない。 3) ジベンゾ[a,h]フェナジンのシトクロムP450 1A誘導を検討したところベンツピレン同様強力な誘導活性が見られた。新規代謝物ジベンゾ[a,h]フェナジンの毒性を考察する上で重要な知見である。 4) ジベンゾ[a,h]フェナジンは膀胱ガンを誘発すると1970年代に報告されていたので、本化合物の代謝を検討した。しかしラット肝ミクロソーム系では本化合物の消費は少なく代謝は遅いことが示唆された。 以上研究計画はほぼ遂行されたが、2)で述べた他のカップリング縮合代謝物の同定が新たな課題となった。
|