研究概要 |
私どもはこれまでコレステロールの腸内異化物質の生理作用を研究中に,コレステノン(cholest-4-en-3-one)の0.5%飼料添加はマウスの体脂肪の蓄積を著明に抑制するが,臨床的な異常はみられないことを明らかにした。これらの知見をもとに,異なった動物種についてのコレステノンの効果について調べた。家族性高脂血症のモデルであるWHHLウサギ,食餌性肥満のSDラット,および正常なSD,FischerおよびWistarラットに対するcholest-4-en-3-oneおよびcholest-5-en-3-oneの投与はいずれの動物においても著しい体重および体脂肪蓄積の抑制とともに血清コレステロールおよびトリグリセライドを減少させる作用があることが分かった。 さらに私どもはcholest-4-en-3-oneがエノン構造をもつことに注目し,エノン化合物および関連ステロイドの一連のシリーズをデザインし,体重と体脂肪の抑制および血清脂質の低下を指標として構造活性相関を検討した。その結果,C3位にカルボニル基を有するエノン化合物cholesten-3-onesに一般状態の異常や食欲不振を起こすことなく,増体重および体脂肪蓄積の抑制のみならず血清トリグリセライドおよびコレステロールの著しい低下を起こす作用があることを明らかにした。 以上の化学的,生物学的性質に加えて作用メカニズムに関する研究からこれらのステロイドは新しい脂質吸収阻害剤であることが示唆された。今後これらの物質の作用メカニズムの解明と,より薬効が強く毒性の少ない化合物を得るためのスクリーニングが医薬としての開発を行うために必要である。
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