研究概要 |
1.今年度新たに見出された11例のグルコース-6ーリン酸脱水素酵素(G6PD)異常症患者遺伝子を検索し、G6PD Harima, G6PD Viangchan, G6PD Iwatsuki, G6PD Puerto Limon, G6PD Canton, G6PD Mahidol-like, G6PD Kamogawa, G6PD Mediterranean, G6PD Omiyaの各変異酵素を同定した。このうち、G6PD Harima, G6PD Iwatsuki, G6PD Omiyaは今回新たに発見された変異酵素で、いずれもミスセンス変異によることを明らかにした。 2.パプアニューギニア(PNG)住民295名(男120、女175、[470 X染色体(XC)])のG6PD遺伝子の部分イントロン配列を含む全翻訳部位を対象に、遺伝子変異のスクリーニングを行なった。現在までに、(1)110T→C(exon2) : 37Met→Thr[1XC]、(2)IVS2 37A→G[9XC]、(3)243C→T(exon4) : 81Arg→Arg[2XC]、(4)1360C→T(exon11) : 454Arg→Cys[1XC]、(5)IVSll 17G→A[4XC]の5種類の単一塩基置換を同定している。これらのうち、(1)(2)(3)は今回新たに見出されたものであり、G6PD遺伝子の遺伝学的な多様性が示唆される。(4)はG6PD Unioをもたらす変異であるが、PNGにおける頻度はわずかに1/470で、バヌアツ、ソロモン諸島など他のメラネシア地域に比べてはるかに低く、今回検索したPNG人集団が一般的なメラネシア人とは遺伝学的に異なることを示唆している。現時点において明らかになった変異の頻度では、モンゴロイドのハプロタイプを確立することは困難であるが、今後さらに未検索のイントロンの変異を検索することにより、有意の解析が可能となることが期待される。
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