研究課題/領域番号 |
07672478
|
研究種目 |
一般研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用薬理学・医療系薬学
|
研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
竹内 孝治 京都薬科大学, 薬学部・薬物治療学, 教授 (00150798)
|
研究期間 (年度) |
1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1995年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
|
キーワード | 胃粘膜 / 傷害発生 / 適応性反応 / 酸分泌抑制 / 内因性一酸化窒素 / 酸分泌促進 / ヒスタミン / 知覚神経 |
研究概要 |
胆汁酸(20mMタウロコール酸:TC)を胃内に30分間適用することにより作製された傷害胃の酸分泌変化に着目し、その調節機序の解明について、内因性一酸化窒素(NO)の役割を中心に検討し、以下の成績を得た。 1.20mMTCを30分間胃粘膜に適用することにより、粘膜電位差(PD)の減少と共に著明な胃内pHの上昇が観察された。このpH上昇は主として酸分泌減少に起因するものであり、矛めオメプラゾールで酸分泌を抑制した場合には殆ど認められなかった。20mMTC適用前にNO合成阻害薬であるN^G-nitro-L-arginine methyl ester (L-NAME)を静脈内に投与することにより、20mMTC処理後に認められる酸分泌減少(胃内pHの上昇)は制御された。しかし、L-NAME処置は20mMTC適用によるPD低下に対しては全く影響を与えなかった。同様な現象はシクロオキシゲナーゼ阻害薬のインドメタシン前処置でも認められたが、誘導型NOSの抑制薬であるアミノグアニジンの前処理では観察されなかった。 2.1)の実験において、L-NAME処理は20mMTC適用による酸分泌減少を完全に抑制し、むしろ酸分泌を有意に増大させることが判明した。L-NAMEによるこの酸分泌の上昇はL-arginineの併用投与により有意に拮抗されたが、D-arginineの投与では全く影響を受けなかった。 3.L-NAMEの存在下に傷害胃粘膜で認められる酸分泌促進は、L-arginine以外にH_2拮抗薬であるシメチジン、あるいはヒスタミン遊離抑制薬であるDSCGによっても有意に拮抗された。また、カプサイシン感受性知覚神経の麻痺、およびサブスタンスPの拮抗薬であるスパンタイドによっても一部制御された。これらの処置はいずれも20mMTC適用によるPD減少に対しては影響を与えなかった。 4.20mMTCの胃粘膜適用中および適用後において、管腔内ヒスタミン量の有意な増大と胃粘膜内ヒスタミン含有細胞数の減少(メタクロマジ-染色細胞数)が観察された。また、これらの変化はL-NAME処理により増強し、逆にDSCGあるいは知覚神経麻痺により有意に抑制された。 以上の結果より、1)胃粘膜に傷害が発生した場合、適応性反応の一つとして胃酸分泌の抑制が認められるが、この現象には酸分泌の抑制系と促進系の両者における活性化が推察される;2)このような酸分泌の抑制系は、少なくとも一部、傷害発生に伴い遊離される内因性NOによって仲介されており、この場合のNOはconstitutive typeのNO合成酵素に依存するものであると考えられる;3)一方、傷害胃における酸分泌の促進は粘膜内ヒスタミンによって仲介されており、この物質の遊離過程には恐らくサブスタンスPを神経伝達物質とした知覚神経の関与が推察される;4)NOは酸分泌促進系におけるヒスタミン遊離に対し抑制的に作用しており、恐らく傷害胃では酸分泌の抑制系と促進系の両者に影響を与えることにより、傷害発生後の酸分泌調節において極めて重要な役割を演じているものと推測される。
|