研究概要 |
平成7年度では、conditioned fear法とコミュニケーション・ボックス法の両ストレス負荷を用いて、ストレスと心電図変化との関係を調べ、特に純心理的と考えられるコミュニケーション・ボックス法で、Wistar系ラットの心電図にR-R間隔の乱れが生じることを見い出した。したがって、平成8年度は、循環器疾患の病的モデルである脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)に心理的ストレスを負荷すれば、ヒトの心臓機能障害発症条件に類似した病的モデルが開発できるのではないかと考え、検討した。その結果、SHRSPに対するコミュニケーション・ボックス法による心理的ストレス負荷により、期外収縮性不整脈が発生することが明らかとなり、平成9年度ではその不整脈の特性について、病態モデルとしての応用を中心に詳細に検討した。一般的に、SHRSPの研究では、食塩負荷が行われるが、モデルとしての適正使用を検討する目的で、本研究では自然経過を観察することとした。本研究では、19,23,34週齢のSHRSPおよびWistar Kyoto(WKY)を用いて検討した。20週齢を超えると拡張期血圧も200mmHg以上となり、ストレス負荷による不整脈発生頻度は増加した。また、34週齢ではストレスを加えなくとも不整脈の発生が認められた。コントロールのWistar Kyoto(WKY)では、何ら不整脈は観察されなかった。また、薬理学的特性として、β_1受容体遮断薬のatenololの前処置は、この不整脈を完全に抑制した。これらの結果、この不整脈発生には、交感神経緊張と持続的高血圧による心臓機能の異常とが関係していると考えられ、このモデルはストレスで誘発される心臓機能異常や循環器疾患を背景とした心臓機能異常の予防薬や治療薬開発のための有用なモデルになり得ると考えられる。
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