研究概要 |
αグロビン遺伝子は,第16番染色体上に,上流よりα_2,α_1と2個の遺伝子が従列に位置する.更に,α_2の約3.5kb上流よりα_1の3'末端にかけてX,Y,Zの3種類の相同性が高い領域が,重複して2組存在しており,α_2及びα_1遺伝子は何れも,それぞれのZ領域に位置している.このことを踏まえて下記の4項目の検討を計画し,long-PCRの技術を駆使して順次検討を加えている. 1.α_1,α_2グロビン領域(各々約2kb)のPCRプロダクトの合成法の確立について (1)α_2グロビン遺伝子を含む約890bpのPCRは既に確立している. (2)α_1グロビン遺伝子を含む約840bpのPCRは(1)ほど容易ではなく,現在検討中である. (3)α_1グロビン遺伝子が存在するZ領域約2kbのPCRは,現在検討中であるが,極めて困難である.引き続き検討する. (4)α_2グロビン遺伝子が存在するZ領域約2kb及びα_1,α_2を含む約5kbのPCRは今後検討する. 2.点変異あるいは数塩基の挿入又は欠失による異常血色素のDNAシーケンサーによるDNA分析法の確立について α_2グロビン遺伝子において既に確立している.他の領域についてもPCR法が確立されれば解決する. 3.広範囲欠失型のサラセミアの分析法の確立について 広範囲の欠失型の1つで、SEA型のPCR法およびDNAシーケンサーによる分析法は確立している.他の広範囲欠失型のサラセミアの分析法は今後の課題であるので引き続き検討する. 4.mRNAを鋳型とするRT-PCRとのコンビネーションによる異常血色素を含むαサラセミアの出現機序の探査について いまだ,検討の段階に入っておらず今後重点的に検討する. 以上,研究実績の概要を記したが,総括すると以下のようになる. この研究はPCR法の確立が鍵となる.しかし,αグロビン遺伝子のPCR法は他の遺伝子領域に比して困難なので,今後更に種々検討をしなければならない.一方,4.については比較的容易に検討できると考えられるので,この方面の検討にも注力したい.
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