研究概要 |
本研究の目的は、センターラボ方式で初診時の検体の収集、個々の症例におけるTCR、IgH遺伝子の再構成を解析、症例特異的プローブの作成までを行い、これを各医療機関の検査室に提供することで寛解導入後の検体における残存病変の定量診断の分業検査が成り立つか否かを検討することにある。 【平成7年度の実績】PCR増幅可能なTCR_γ・δ鎖遺伝子の再構成を全ALLの80%以上が持つこと、ジゴキシンゲニンを用いた症例特異的プローブのnon-RI標識が可能であること,これを用いて医療機関の検査室でMRDの定量診断が可能であることを示した。 【平成8年度の実績】前年度に引き続いてTCR_γ・δ鎖遺伝子を利用しジゴキシゲニン標識法で急性白血病における微小残存病変の定量的診断を行った.本法は感度・再現性ともにが良好であったが,寛解時の検体をPCR増幅したあと,ドットブロット,ハイブリダイゼーション,洗浄,露光,現像など複数の行程を必要とした.そこで変法として、症例特異的な塩基配列を増幅用プライマーとした検出法をあらたに確立した.この方法はまず初診時の白血病細胞のDNAをPCR増幅し,得られたクローン性産物の塩基配列を決定し,これから症例特異的な増幅用プライマーを設定するものである.このプライマーを各医療機関に送り寛解時の骨髄や末梢血のDNAを増幅し,残存病変の定量を行うことが可能になった.これらの方法を用い,通常化学療法だけでなく,末梢血幹細胞移植治療における,移植片内への白血病細胞混入の程度と予後との相関を調べることとした.23例のALLで移植片内へのMRDの混入と移植後の治療成績について比較検討ができた.この結果,寛解を保っている群(12例)で再発した群(11例)に比べ、有意にPBSC採取までの前治療の期間が長く(129日vs237日、p_<0.05),PBSC中に残存細胞が陽性率も有意に低率であった(p_<0.05)。これらの事実から自家移植における残存病変定量の有用性が示された.本法による残存病変定量はALLのほとんどで可能でありprospectiveに治療に反映させることで患者予後を改善する可能性が示された。
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