本研究の目的は、外国人看護研修生とその受け入れ機関の指導者を対象に、研修の現状と課題を調査し、効果的な研修プログラムを検討することにある。 研究対象は、都内の医療機関と研究教育機関で外国人看護研修生と関わった経験のある看護関係者9名、わが国で研修を行った経験のある外国人看護婦2名であった。調査方法は、対象1名につき30分から3時間の反構成的面接を行い、了承を得てテープに録音した。 調査結果は以下の通りであった:1)環境の変化や疲労による身体症状、家族、特に子どもに対する心配によるホームシック、研修生の目的と実際の研修のギャップによる心理的不安定などが見られた研修生もいた。2)研修生に対して、日常生活に関する細かなオリエンテーションが実施され、住宅、交通機関の利用、経済的側面など研修生の生活環境は整えられていた。3)研修生が自分の目的を達成できるように周囲の人間関係も考慮されていた。4)研修の中で言語能力は大きな課題であり、研修生の日本語能力の違いにより、指導者の対応や指導方法が工夫されていた。5)研修生の目的が明確ではないため、指導者が目的を把握できず、調整が困難であることが課題として多く挙げられていた。また、目的が不明確な上に研修生の準備状況がよく査定されていないことにより、受け入れる病棟側が指導体制、指導方法、評価について不安に思っていた。6)指導者は研修生に対して肯定的な印象をもっていたが、研修生には患者に対する日常生活援助の意識があまりなく、技術に偏る傾向があると考えていた。 今後の施設での研修プログラムについて、研修生個々の知識、技術、言語能力に関する査定を行い、それを踏まえて研修目的を明確にし、具体的な研修方法を考えていく必要がある。また、研修生の指導において、査定から実施、評価までできる言語能力も備えた専門家の育成が望まれる。
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