研究概要 |
研究代表者らは、(1)未熟児の恒光環境が、早産未熟児の幼児期に至るまでの生体リスム、および、後の行動発達に対する長期的な影響の有無を明らかにするため、また(2)受胎後40週以降も恒光下の未熟児室に長期入院している未熟児におけるリズムの発達の遅れの有無について明らかにする目的で本研究を行ってきた。 平成8年度には、目的1に関して、平成7年度からの研究を引き続き行った。先行研究で対象とした早産未熟児44名及び正常対照の正期産児40名,計84名の幼児にたいし、睡眠記録は生後2歳6カ月時点で、早産未熟児および正期産児に両群の睡眠表記録、対象児の唾液中のコルチゾールの測定、平行して2歳,2歳6カ月,3,4歳になる日に、行動発達の縦断調査を行った。睡眠覚醒リズム、コルチゾールのサーカディアンリズム、行動発達のいずれも、生後月齢で比較しても正期産児との差が無くなり、生後一定期間でキャッチアップするという新たな知見が得られた。 平成9年度には、目的2に関して、東京女子医大母子総合医療センターNICUに、受胎後40週以降も恒光下の未熟児室に長期入院している早産未熟児8名を対象として、NICU入院中に4週間以上連日NICUスタッフが睡眠票記録を行った。その結果、NICU長期入院児は24時間周期への同調が遅く、一日の覚醒時間が有意に少ない一方で、昼間の睡眠時間の方が多く昼夜逆転の傾向があることが示唆された。従って、NICUの中では、昼間覚醒時間を増加させ、睡眠覚醒リズムの発達を促す援助が必要である。 また、NICU入院中,生体時計本来の25時間周期であるfree run rhythmを示し、修正72週でも睡眠覚醒リズムが24時間周期に同調していなかったKH児に対して,看護スタッフとの遊びや母親の面会を定時的に行うことによって規則的な接触刺激の介入を行い、睡眠覚醒の一日リズムの発達を促す援助を試みた。その結果、睡眠覚醒リズムが24時間周期に同調し始め,修正84週過ぎ、即ち修正10ケ月で同調した。この事例から、未熟児室の環境では物理的・人的環境の変化が少ないためリズムが同調し難いが、面会など母親の関わり方により昼間覚醒時間が増加し、睡眠覚醒リズムの同調を促すことが示唆された。
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